臨床の場では形成外科という科が立ち上がってから取り組んできた領域の一つですが、近年は研究の場でも注目が集まってきています。
国立霊長類研究所で、霊長類を含めた哺乳類各種の中で、ヒトのみが皮膚の創傷治癒が著しく遅延したミュータント動物であり、創収縮能力を欠損する動物であることが見いだされました。
ヒトが進化の過程で他の類人猿とは大きく異なる皮膚を獲得する一方、創傷治癒の能力を失ったのは何故なのか、霊長類研究を通した進化学・人類学的な興味として新たな研究がなされつつあります。
傷跡と瘢痕のメカニズムは徐々に明らかにされつつありますが、
未だ形成外科の瘢痕の教科書には、最終的にはメイクアップセラピーなどを利用すべきとの指導がなされています。つまり傷は消えないけれども、目立たせなくすることはできますよいうことだけです。
できた傷を瘢痕は治癒過程においても個々の様々な要因により修飾され長い年月をかけて様を変えて行きます。
その特性を踏まえて適応と思われる治療を選択しています。
以下は冨士森先生のお言葉を引用します(京大で形成外科を立ち上げた先生ね今では誰でもできるようになった皮膚移植術ですがその基礎を作り上げた先生でもありますまぁ天才ですね)
「患者を20年つかまえていたからといってあぐらをかいてちゃいかんのです(原文ママ)」