ダニがウイルスを媒介
ダニ媒介性脳炎について1,2
ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニに刺咬されることにより感染する疾患です。急性ダニ媒介性脳炎の経過と長期的転帰は、感染したダニ媒介性脳炎ウイルスの亜型によって異なります。日本(北海道)には極東亜型のダニ媒介性脳炎ウイルスが分布しており、感染すると徐々に頭痛、発熱、悪心、嘔吐等の髄膜炎症状が現れ、さらに脳脊髄炎を発症すると精神錯乱、昏睡、痙攣、麻痺等の中枢神経症状を呈します。また、ダニ媒介性脳炎ウイルスの亜型の中で極東亜型が最も重篤な経過をとり、致死率は20%~40%で、生残者の30%~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。ダニ媒介性脳炎は英国、ノルウェー、フランス、ドイツ、ロシアを含むヨーロッパ、中国や日本を含む東アジア等、世界で毎年10,000~15,000件報告されており、前述のとおり、本邦ではこれまでに北海道で5例の発生が報告されています。疾患に対する認知度や検査体制が不十分等の理由から、急性脳炎等を発症してもダニ媒介性脳炎ウイルスの感染確認に至っていない可能性も示唆されており、本邦におけるダニ媒介性脳炎の実態は十分に把握されていません。