診察室のしつらえ

治療の根にある「形態は、機能を超えない」。
使い勝手を大切にするカッシーナの家具も、見えない所まで整えた建物も、落ち着いた街も、同じ考えで選びました。

形態は、
機能を超えない。
この考えは、まぶたや耳の手術だけのものではありません。
診察室の家具も、建物のつくりも、医院を置く場所も、同じ考えで選んできました。
見た目は、働きのあとについてくる。
目が開けやすいこと。耳が、マスクや眼鏡をきちんと支えられること。肌が、季節や年齢の移ろいの中でも、健やかでいること。
働きを損なわずに整えたものだけが、何年たっても自然で、美しいままでいられる。この考えを、治療の場そのものにも通しています。
素材の性質を知り、逆らわずに形をつくる。
広島のマルニ木工は、1928年から、木を曲げる技術を磨いてきました。木の性質を知り、その性質に逆らわずに曲げるから、美しく、長く使える椅子になります。
耳の軟骨も、同じです。耳の軟骨は、肋骨の軟骨とは性質がまったく違う。だから、折らずに、木の枝を矯めるように、やわらかく形を整えます。
素材を知る手が、形をつくる。
折らずに、矯める →立ち耳の手術の修正
使う人のための家具
患者さんにお掛けいただく椅子や家具は、イタリアのカッシーナのものです。カッシーナは1927年、イタリア北部の町メダで生まれ、ル・コルビュジエをはじめとする、20世紀を代表する建築家たちの家具を、いまもつくり続けています。
その美しさは、座る人の体と、使い勝手から生まれます。長く座っても体がらくで、毎日使っても形を保ち、何十年も使い続けられる。素材と職人の手を、何より大切にしてきた家具です。
診察室の家具は、副院長が選びました。
目に見えないところほど、手を抜かない。
開院のとき、事務所として建てられたビルを、診療のための建物につくり変えるところから始めました。設計と施工は、信頼できる建築家と建設会社にお願いしました。
重い医療機器を置く床はコンクリートで補強し、レーザー機器のための電源を整え、清潔なお湯が使えるよう設備を足しました。患者さんの目にふれることのない部分ですが、安全で確かな治療は、こうした見えないところに支えられています。
治療も同じです。皮膚の下の、目に見えない部分をどう扱うかで、何年後の仕上がりが決まります。
場所を選ぶことも、治療のうち。
開院以来、中之島から淀屋橋にかけての一帯に、医院を構えてきました。江戸時代には各藩の蔵屋敷が並び、近代には中央公会堂や図書館が市民の手で建てられた、経済と文化の積み重なった土地です。
静かな街並みと、夜も安心して歩ける環境も、ここを選んだ理由です。扉の内は、医師とおひとり様だけ。人目を気にせず、心静かに過ごしていただける場所であるように。家具も、建物も、街も、そのための大切な道具です。
長く使えるものを選ぶことは、長く大切にすること。